| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-206

シロアリの卵認識における下唇鬚と触角の役割

*内藤龍太,松浦健二(岡大院・環境・昆虫生態)

社会性昆虫において、次代を担うブルード(卵・幼虫)の世話は非常に重要な行動である。例えば、シロアリでは、ワーカーが卵を育室に集め、卵塊を形成する事で効率的に世話を行っている。その際、卵表面に存在する不揮発性物質である抗菌物質のリゾチーム(Matsuura et al. 2007, PLos ONE)とセルロース分解酵素のβ-グルコシダーゼ(Matsuura et al. 2009, Current Biology)を用いて、卵認識を行っている事が既に解明されている。また、最近の我々の研究によって、卵から揮発性物質も放出されており、それが卵に定位する際のシグナルとして機能している事が明らかになっている(Matsuura et al. submitted)。ワーカーは卵から分泌されている揮発性・不揮発性物質を受容する事で、卵に定位し、認識している。本研究では、その定位と認識のプロセスにおける各感覚器官の役割について分析を行った。

昆虫の一般的な感覚器官として下唇鬚と触覚が知られているため、シロアリのワーカーもそれらを用いて、卵から分泌されている揮発性・不揮発性物質を受容し、卵を知覚していると考えられる。そこで本研究では、ヤマトシロアリReticulitermes speratusを用い、下唇鬚と触覚のどちらが揮発性・不揮発性物質を認識しているかを明らかにするため、それらの器官を切除し、卵運搬行動への影響を調べた。その結果、下唇鬚が不揮発性物質、触角が揮発性物質を認識している事が明らかになった。それを踏まえ、シロアリは、卵への定位・卵認識・卵塊への定位という異なる3つのステップによって卵塊を形成し、効率的に世話を行っている事が示唆された。


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