| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-209

カラフトマスの周期的な個体数変動

*森田健太郎・森田晶子・福若雅章・永沢亨(水総研)

サケ科魚類のカラフトマスは一回繁殖で成熟年齢は2年である。地域によっては、カラフトマスの個体数は二年周期で大きな変動を示し、奇数年と偶数年で豊漁不漁が長期間にわたり継続することが知られている。しかし、2年周期が長期間にわたり継続する理由について十分な理解はなされていない。本研究では、1973年以降ベーリング海で実施されているサケ科魚類のモニタリングデータ分析し、カラフトマスの個体数変動におよぼす要因について分析した。ベーリング海のカラフトマスは調査期間を通して奇数年が豊漁年にあたり、偶数年との密度指数の差は約10倍であった。カラフトマスの体サイズは豊漁年である奇数年の方が大きく、カラフトマスの個体群増加率はカラフトマスの平均体重と正の相関が見られた。なお、カラフトマスを含む多くの魚類の産卵数は、体重とアイソメトリーの関係にある。カラフトマスの体重は同所的に分布するサケ未成熟魚の密度指数と負の相関が認められ、サケの未成熟魚は偶数年で密度指数が高かった。サケはカラフトマスと同様に一回繁殖であるが成熟年齢は2〜7歳と幅があり、サケの成熟率および年間成長量は前年のカラフトマスの密度指数と負の相関が認められた。偶数年のサケは成熟率が低く、海洋に残留する未成熟魚の密度指数が高かった。また、北太平洋東岸の41地域間で比較を行った結果、豊漁不漁の差が大きい地域ほど、豊漁年の体サイズが大きい傾向にあった。決して単純ではないが、サケとの種間相互作用に起因する体成長の2年周期が(豊漁年の方が大きい)、カラフトマスの豊漁不漁を維持する一要因であると考えられた。


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