| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-252

コバネナガカメムシの個体群間にみられる形質変異と地理的な遺伝構造の違いとの関連

*嘉田修平(京大院・農・昆虫生態),兼子伸吾(京大院・農・森林生物),井鷺裕司(京大院・農・森林生物),藤崎憲治(京大院・農・昆虫生態)

河川を生息地として利用する生物では、分布が限られてくる。その結果、河川にそった遺伝構造のつながりを示す種が、水棲の無脊椎動物で知られている。本研究で材料としたコバネナガカメムシは、翅多型性昆虫であり、野外で発見される個体はその多くが短翅型(定住型)で、非常に分散能力は低いと考えられる。寄主植物は、主に河川に生えるツルヨシと湖沼に生えるヨシであり、それぞれの植物群落上で本種は大きな個体群を形成する。また、本種のヨシ個体群とツルヨシ個体群の間では、体サイズや分散型出現性に、遺伝的基礎をもつ形質の差がみられることがこれまでの研究で分かっている。つまり、ツルヨシ個体群とヨシ個体群の間で、遺伝的分化が進んでいる可能性が示唆される。本研究では各個体群の16SrRNA領域の遺伝子配列を調べることで遺伝構造を明らかにし、形質の差をもたらす遺伝的バックグラウンドを検証することを、目的とした。

遺伝構造を調べた個体群は、滋賀県の琵琶湖沿岸のヨシ群落における本種個体群と、琵琶湖の流入河川沿いのツルヨシ群落上の個体群を選んだ。流入河川では各3〜5個体群、琵琶湖沿岸では10個体群程度において採集を行い、全個体の16SrRNA領域の塩基配列に基づく系統解析を行った。その結果、異なる個体群から採取された個体が同一の塩基配列を有しているなど、個体の分布と系統関係に対応は認められなかった、また、淀川流域内の猪名川個体群や三重県の河川個体群のように琵琶湖から離れた地域に分布する個体からも琵琶湖沿岸で採取された個体と同一の塩基配列を有する個体もあり、本種が比較的頻繁に長距離を移動していることが示唆された。それらの結果をもとに、形質の差がみられるのに、rRNAの遺伝子型構造について差がみられない理由を考察する。


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