| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-267

死にまねの生態学的意義と生体アミンの役割

*宮竹貴久(岡山大院環境),佐々木謙(金沢工大),西 優輔(岡山県農総セ)

多くの分類群の生物で、外部からの刺激を受けると動かなくなる「不動」行動が知られている。この行動は、一般に、「擬死」、「死んだふり」とか「死にまね」と呼ばれる。本発表では、まず擬死をした個体にとって、この行動が生存の上でどのように役立つのかについて過去に解釈された研究報告をレビューし、擬死の生態学的意義について考える。次に、コクヌストモドキにおいて、1) 20世代以上の人為選抜実験によって死にまね時間を遺伝的に長く固定した系統(L系統)と、遺伝的に短く固定した系統(S系統)の成虫に対して、それぞれ神経伝達物質として働く生体アミンであるオクトパミン、セロトニン、チラミン、ドーパミンを腹部よりインジェクションして擬死時間のアッセイを行った実験、2) 両系統にドーパミンの働きを強める作用を持つカフェインを経口投与、およびインジェクションして擬死行動アッセイを行った実験、そして 3) 両系統の脳内に存在する生体アミン類の量を比較した解析の結果から、コクヌストモドキの死にまね持続時間を支配している主な物質が神経伝達物質であるドーパミンであることを示し、昆虫の不動行動における生体アミンの役割について考察する。


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