| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-273

イモゾウムシの交尾行動に関する至近要因

*熊野了州, 栗和田隆, 城本啓子(琉球産経(株)/沖縄病害虫防技セ), 小濱継夫(沖縄農研セ), 原口大, 安田慶次(沖縄病害虫防技セ)

一般に動物の交尾行動は雌雄双方の意思決定のもとに成立する。雄が雌に求愛する場合、求愛の強さはライバルの存在、潜在的な交尾相手の質やその出会い頻度など、様々な要因に基づき決定することが多くの研究で示されている。イモゾウムシ(Euscepes postfasciatus)はサツマイモの重要害虫で、熱帯〜亜熱帯に分布し、日本では南西諸島に分布している。本種は交尾の前後に雄のマウント行動が見られ、この行動は数分から数時間とばらつきが大きい。マウント時に雄は何らかの方法で雌を刺激し、雌が腹部を持ち上げることで交尾が成立するが、雌に受入れられないままマウントを解除する例も少なくなく、時間的なコストにもなる交尾努力と考えられる。現在、雄のマウント行動を解発する化学物質が、雌成虫の体表に存在することが明らかになっているが、交尾行動における本物質の機能は明らかではない。本研究では、マウント行動解発物質を含む雌抽出物を塗布したガラス玉(モデル)を使用することで、交尾相手に関する要因のコントロールを行い、雄の交尾経験や、モデルの経験を操作し、その後の求愛努力(モデルへの反応時間)と求愛成功を調査した。その結果、羽化後雌の存在を全く経験しない雄や交尾を経験した雄に比べ、モデルを経験した雄は、求愛努力が減少した。一方で、モデルを経験した雄はそうでない雄と比べ交尾成功が高かった。これらの結果から、化学的刺激による雌の存在の認知が雄の交尾成功を高めるが、求愛努力と見られるモデルへの反応時間を延長が関与しているのではないことが明らかになった。本種では、未交尾雄の雌認知により、配偶者に関する評価時間の変化や求愛努力の質的変化の可能性がある。


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