| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-279

群れと群れの間の闘争の非対称消耗戦ゲーム:誰が立ち上がるべきか?

上原隆司, *加藤直子, 瀧川裕貴(総研大・葉山), 佐々木顕(総研大・葉山/JSTさきがけ)

社会行動を営む動物において、あるグループが保有する資源をめぐって侵入者とグループ内の個体間または協力する複数の個体との間で闘争が起こることが知られている。一般に、侵入者の行動の種類や反応には、対峙する個体または個体群の強さが大きく関係すると考えられている。それに対して、グループ内のどの個体がどの時点で侵入者との闘争に参加するかについては、個々の個体の意思決定によるものであり、その要因は複雑である。

この研究では、互いに力の異なる2個体(A,B)からなるグループが、ある資源を分け合っている状況を仮定した上で、この資源をめぐって侵入者(I)が現れた時、ペアのどちらがいつ闘争に参加するのかという問題を進化ゲーム理論で定式化し、シミュレーションを行った。

結果として、グループ内の個体A,Bそれぞれの力が侵入者と大きく異なる場合、侵入者より強い個体は戦い,弱い個体は逃げる行動が一貫して見られた。また、侵入者の力とAとBを足した力が同じくらいの場合、ペアの行動は侵入者とペアそれぞれにとっての資源の価値の大きさとコストとの関係において変化することが分かった。さらに、ペア間で力が大きく異なり、かつ強い個体が侵入者と同程度あるいはそれ以上強い場合には、強い個体が戦いにまず参戦し、弱い個体は時間をおいて参戦するといった「ようすを見る」行動がみられることが分かった。グループ内の個体の行動が、同じ強さを仮定してもペアの片方の強さによって変化することが重要である。


日本生態学会