| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-290

卵寄生リスクに応じた産卵場所の決定は子の生存率を高めるか?

*平山寛之, 粕谷英一(九大・理・生態)

親が産後に子の世話を行わない動物では、卵を産みつける場所が子(卵)の生存・成長に影響する。様々な要因が親の産卵場所の選択に影響するが、中でも捕食リスクの影響は一般的であり、親は捕食リスクが高い場所での産卵を避ける。これまで捕食リスクが記憶され、後の産卵場所の選択に影響することは考慮されてこなかった。しかし、アメンボにおいて卵寄生蜂を事前に経験(密閉容器内で24時間同居)させることで、産卵時に卵寄生蜂が存在せずとも寄生を受けにくい水深の深い位置に産卵することが示された。つまり、卵寄生リスクが記憶され、その後の選択に影響することが示された。だが、この先行研究では卵寄生蜂の経験を1度しか与えていない。野外ではアメンボは卵寄生蜂に繰返し遭遇すると考えられる。そこで、卵寄生蜂を繰返し経験したアメンボの産卵深度がどのように変化するかを調査した。室内でアメンボを3つのグループ(卵寄生蜂を毎日経験させる、初日のみ経験させる、全く経験させない)にわけ、10日間産卵深度を計測した。1日目と2日目は毎日経験したものと初日のみ経験したものが経験のないものに比べ深い位置に産卵した。3日目以降は毎日経験したもの、初日のみ経験したものいずれも1, 2日目に比べ産卵位置が浅くなったが、毎日経験したものは初日のみに比べ深い位置に産卵していた。これらの結果から、同じ卵寄生リスクを繰返し経験した場合、初めは卵寄生を受けにくい深い位置に産卵するが、その後は深い位置を利用しなくなることが明らかになった。この原因は明らかではないが、老化による潜水能力の低下などが可能性として考えられる。また、各グループのアメンボが産んだ卵を卵寄生蜂存在下におき、得られた寄生率のデータから、繰り返し卵寄生リスクを経験したアメンボとそうでないものの卵寄生回避効率について議論する。


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