| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-299

塩分に対応する幼生(両生類)の孵化行動可塑性

原村隆司,京大・理・動物行動

両生類(特にその卵)は一般に塩分に弱いため、海岸環境を繁殖場所として利用する種は少ない。そういった両生類の中で、リュウキュウカジカガエル(Buergeria japonica)は海岸環境でも繁殖している興味深い種である。本種が海岸環境で繁殖できる理由の一つとして、私はこれまで母親の産卵場所選択が重要であることを述べてきた。この母親の産卵場所選択によって、卵は高塩分による死亡を避けることができる。しかし、海岸環境は、強い海風などによって、母親が選んだ産卵場所でも急激に塩分濃度が上がる可能性がある。本研究では、そのような事態(塩分濃度の急激な上昇)に対応して、卵の中の幼生は孵化するタイミングを変えているのかを検証した。抱接ペアを採集し、得られた卵を36時間淡水で飼育した。その後異なる塩分濃度(0‰、1‰、2‰、5‰、10‰、20‰、30‰)の水域に卵を移し替え、幼生の孵化までの時間を測定した。その結果、塩分を加えた幼生は早く孵化し、特に5‰以上の塩分濃度では、幼生はすぐに孵化した。この結果から、卵の中の幼生は周りの塩分濃度を認識でき、それに応じて孵化するタイミングを変えていることが分かった。この幼生の孵化行動は、高塩分による卵の中での死亡を避けるためであると考えられるが、この行動がリュウキュウカジカガエル特有のものなのか、他の種のカエルも持つ一般的な行動なのかは今後の課題である。


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