| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-001

イシダタミガイの年輪分析による年齢査定とサイズ頻度分布

橋野智子(鹿児島大・理),*冨山清升(鹿児島大・理)

鹿児島県の桜島には溶岩によって形成された転石海岸において,イシダタミガイの生活史を研究した。桜島の潮間帯には数mの岩から数cmの小石まで様々な大きさの転石が存在する.そして,転石層の厚さも下層の砂が見える程度から数10cmの深さまで潮位やその場所によって異なり,潮間帯の環境は変化に富んでいる.本研究では,この転石海岸で比較的多く見られる巻貝の生態学的研究の一環として,桜島袴腰海岸におけるイシダタミ(Monodonta labio confuse)個体群の1月ごとのサイズ頻度分布と季節ごとの密度を調査し,イシダタミガイの生態を明らかにすることを目的とした.イシダタミガイは潮間帯の転石帯の転石の下などに生息している巻貝である.北海道以南に分布する. サイズ頻度分布調査は2007年1月から2010年12月まで月に1回,潮間帯で1 00個以上採集し,殻高を測り,生活史を調べた.また,イシダタミガの年輪を計測することにより、絶対年齢と殻サイズとの関係も調査した.イシダタミガイの新規個体加入のピークは2007年4月と2007年12月から2008年2月にあったが,3・5・6・11月にも少数ではあるが加入していた.夏はサイズピークが6から9月にかけて8mmから1mmずつ大きくなった. イシダタミガイ−シマベッコウバイの種間関係は,ω指数が±0.5以内であることから,ほぼ独立分布であり,その傾向は5から12月にかけて重なる分布に近づいた.イシダタミガイ−カヤノミカニモリは8月と12月に排他的分布に近くなった.カヤノミカニモリは8月に中部上で多く,12月に中部下で多い.一方,イシダタミガイは8月で中部下に多く,12月で下部に多い.イシダタミガイの生殖に伴われる移動が,8・12月において,排他的分布を示す原因の1つであると考察した.


日本生態学会