| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-004

潮間帯上部に生息する巻貝の生息環境と殻色多様性に関する研究

*河合渓(鹿児島大・多研セ),森脇広,永迫俊郎(鹿児島大・法文),奥野充(福岡大・理),R.Crocombe (USP),G.McCormack (Cook NTH),G.Cowan,P.T.Maoate (Cook Gov.)

潮間帯は海と陸の狭間の環境で、さまざまな環境要因が大きく変動する場所である。特に潮間帯上部は干潮時には非常に高温になり、岩の温度は40度以上になることも多い。このような環境変動の激しい環境でも、貝類など色々な生物がさまざまな環境変動に適応し生息している。キバアマガイはインド太平洋の潮間帯上部の岩礁域に広く分布する巻貝で、この仲間は白色の殻を持つものと殻表に黒点を示すタイプがあることが報告されている。また、灰白色をしたビーチロックや黒色をした玄武岩など色々な基質上に生息することが知られている。本研究ではキバアマガイの基質に対する殻色の多様性と体内の温度に注目し、この貝の適応戦略について検討を行った。

調査は南太平洋に位置するクック諸島のラロトンガ島とアイツタキ島において、2008年8月と2009年9月に行った。ビーチロックと玄武岩の両生息域では白色、一部模様、全体模様(黒色)の殻タイプが観察されたが、場所によりそれぞれの殻色の出現頻度に異なる傾向が示された。また、キバアマガイが生息する岩の表面温度を測定した結果、玄武岩ではビーチロックよりも岩温度が若干高い値を示した。貝類の体内温度は自分の貝殻の色に近い生息環境にいる個体のほうが低いことが示された。本発表では、これらの結果をもとに貝殻色多様性と基質に対する適応について考察を行う。


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