| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-013

琵琶湖周辺の水田地帯に遡上する魚類の日周変化

*金尾滋史(多賀町博/滋賀県大院・環境), 舟尾俊範, 田和康太(滋賀県大院・環境), 前畑政善(琵琶湖博), 沢田裕一(滋賀県大・環境)

潅漑期になると河川や湖沼に生息する多くの魚類が水田地帯へ出現することが知られている。これらは各魚種における水田地帯の利用目的や環境要因の変化などから各季節間や各日間で種組成や出現個体数が異なっているが、さらに各魚種の日周性や時間的な環境変化なども加味すると、一日の中でも時間によってそれらが異なっていると考えられる。そこで、本研究では、水田地帯の水路に遡上してくる魚類について、一日における各時間ごとの種数・個体数の出現状況を調べることを目的とし、琵琶湖周辺における水田地帯の小排水路3地点において魚類採集調査を実施した。

調査は2003年、2009年の5-7月にかけて3地点で主に増水時と平水時合計2回ずつ実施した。それぞれの調査地点では小排水路へ遡上する魚類を採集するためのモンドリを24〜60時間設置し、1時間または6時間おきにモンドリを回収して採集された魚類の種の同定および体長の測定を実施した。また、モンドリ回収時には小排水路の水位、水温、流速を計測した。

調査の結果、合計で4科6種・亜種の魚類が採集され、平水時と増水時の出現種数や個体数を比較すると増水時の方が多かった。増水時には特にニゴロブナ、ギンブナといったフナ類がよく採集され、それらは繁殖期をむかえた成魚と体長20-30mm程度の当歳魚が出現した。フナ類の成魚は昼夜を問わず出現したが、当歳魚は昼間によく出現していた。一方で、トウヨシノボリやドジョウは平水時も増水時も採集されたが、トウヨシノボリは昼間の時間帯によく出現しており、ドジョウは昼夜を問わず出現していた。これらの時間的な消長は降雨などによる水位の増減も鍵となるほか、各魚種の日周性さらには同種であってもの成長段階などが異なるために起こると考えられた。


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