| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-015

自動録音装置を使った谷戸田におけるカエル類の音声モニタリング

*戸金大(明治大・院・農),福山欣司(慶應大・生物),今津健志(東邦大・理),倉本宣(明治大・農)

近年カエル類のモニタリングとして,鳴き声を指標とした生息状況調査が各地で進められている。繁殖期のカエル類ではオスによるメイティングコールが盛んに行われる。種ごとにメイティングコールは異なるため,複数の鳴き声が聞こえても,種の判別は容易に行うことができる。水中でメイティングコールする種と異なり,水田や池などの止水域で繁殖活動を行なうカエル類であれば,水面や水辺でコールするため,生息状況を確認することは可能であり,鳴き声が聞こえる期間は種ごとの繁殖期間の指標となる。

そこで,本研究では神奈川県川崎市に位置する谷戸田において,音声モニタリングによるカエル類の3年間の出現開始時期と鳴き声が聞こえる期間の傾向を調査した。

調査は2007年3月から2009年11月にかけて,谷戸に広がる水田(耕作水田,休耕田,水張り水田)に隣接する位置にICレコーダを用いた自動録音装置を設置し,毎日20:00から20:10までの音声を録音した。定期的に音声データを回収し,10分間に一度以上鳴いたカエルの種類を記録した。音声モニタリングと併せて環境条件として,気温,地温,相対湿度,積算雨量を計測した。その結果,シュレーゲルアオガエルとニホンアマガエルの2種類の鳴き声を確認できた。この2種の鳴き声から以下のような傾向が認められた。シュレーゲルアオガエルの出現開始時期は3月下旬であり,6月下旬になると鳴き声を確認できなくなり,鳴き声の確認できる期間に年度間による大きな違いは認められなかった。ニホンアマガエルの出現開始時期は年度間によって異なり,シュレーゲルアオアガエルと同日に出現した年と4月上旬に出現した年があったが,どの年にも降雨の翌日に出現するという傾向が認められた。講演ではこれらのカエル類のモニタリング結果と環境条件について考察する。


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