| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-041

高山における絶滅危惧植物の全個体ジェノタイピングに基づく保全策の構築‐ヤクシマリンドウを例に

*阿部晴恵(東北大学), 手塚賢至(屋久島生物多様性保全協議会), 荒田洋一(屋久島まるごと保全協会),斎藤俊浩(屋久島生物多様性保全協議会),手塚田津子(屋久島生物多様性保全協議会),陶山佳久(東北大学)

本研究は環境省RDBにおいて絶滅危惧IA類(CR)に定義されているヤクシマリンドウを対象に、全個体の生育位置・遺伝子型情報の包括的モニタリングによる新たな保全策を構築することを目標としている。

ヤクシマリンドウGentiana yakushimensis は岩上に生える多年草で、鹿児島県屋久島のみに生育する固有種である。本種は園芸対象としての盗掘の影響を受け、これまでに生育株数が激減しているだけでなく(環境省生物多様性情報システム)、屋久島の亜高山帯にのみに生育することから、地球温暖化の影響による分布域の縮小も懸念される。また、送粉システムや繁殖状況など生態学的な情報も不足しており、その保全管理のためには基礎的な情報収集が不可欠である。

調査は、地元NPO団体の協力のもと、平成21年8月と10月に、視覚的に地上部がパッチ状に分かれているものを一株とし、株ごとに位置情報収集と株サイズの測定、花芽数のカウントを行った。また、株内のジェネット構成を把握するために、株内の茎からランダムに葉の採取を行った。その結果、分布の中心地である永田岳(1886m)では、標高約1800m以上の花崗岩が露出している限られた範囲のみに200株以下が確認され、約30%に着花が見られた。開花期に花粉媒介者と考えられるハナバチの訪花が確認されたものの、結実期に果実は確認されなかった。さらに、SSRマーカーを用いて個体性(ジェネット構造)や空間的遺伝的構造を明らかにすることで、ヤクシマリンドウの存続に関わる遺伝的情報を整理し、遺伝的変異の空間的分布に基づく保護地域の設定など具体的な保全方法について検討する。


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