| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-059

南アルプス 北岳で始まったモニタリング1000

*名取俊樹 (国環研 生物)

我が国の高山生態系を継続的にモニタリングすることで、適切な生物多様性保全施策に貢献するため、2008年にモニタリングサイト1000(モニタリング1000)高山帯調査の検討会が開かれた。その検討会での議論をもとに、2009年に北岳(3193m 山梨県)でモニタリング1000の試行調査が行われた。演者はその一部を担当し、植生調査、ハイマツの年枝生長調査、生物季節調査などを行った。本講演では、主に、植生調査の結果の一部について報告する。今後長期間継続的にモニタリング調査を行っていくうえで、調査に伴う調査地への撹乱をでき得る限り少なくすること、また、調査者による結果の差異ができるだけ小さいことなど考慮すべき点は多い。それらを考慮し、試行調査での植生調査は、風衝草原および高茎草原に、それぞれ1×10mの永久コードラートを設定し、写真撮影を行い、その画像から10×10cmメッシュ(計1000メッシュ)毎にそのメッシュを代表する1種あるいは2種を選出する方法で行った。また、風衝草原では、10×10cmメッシュ毎の現地調査による全種調査を行い(全種調査は自然環境研究センター 畠瀬、河野両氏が担当)、結果を比較した。その結果、写真撮影では25種(地衣類を除く)、現地観察では43種が認められた。また、写真撮影調査の比較から、高茎草原に比べて風衝草原では、イネ科とカヤツリグサ科の植物(一般的にケイ素の濃度が高い)の割合が高いことが分かった。さらに、トラバース道分岐付近から以前に撮影した写真と2009年に撮影したものとの比較から、おおよそ10年前にはあったハイマツの一部が消失していることが分かった。


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