| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-064

薩南諸島から九州南部における干潟腹足類ウミニナ類の地理的分布

*山本智子,篭原啓文,山本耕聖,峰山真実(鹿児島大・水産),上村了美(国技政策総研),浜口昌巳(瀬戸内海水研)

ウミニナ類は干潟の底生生物の中でも現存量が大きく、干潟の食物連鎖で重要な役割を果たしている分類群であり、薩南諸島から九州にかけては4種が分布している。そのうちウミニナとリュキュウウミニナは遺伝子解析の結果極めて近縁であることがわかっており、両種の分布は奄美大島の一海岸でのみ重複する(2003.小島)とされているが、地理的分布の境界線において両種がどのように分布しどのように共存しているかについて詳細な研究はなされていない。薩南諸島は種子島から奄美群島最南端の与論島までの大小様々な島々からなり、その中央にはトカラギャップと呼ばれる水深1000mの海裂が横たわるため、この線は海岸生物、特に潮間帯の種にとっては大きな障壁となり得るものである。奄美大島のウミニナはその障壁を越えて分布していることから、個体群存続と近縁種との共存に際して特殊なメカニズムを持っている可能性がある。そこで本研究では、この海域におけるウミニナとリュウキュウウミニナの分布を詳細に示すことを目的として、野外調査と遺伝子解析を行った。

種子島で22地点、奄美大島で21地点、九州本土では30地点以上で調査を行い、ウミニナ類分布の有無を確認した上、各海岸30個体以上のサンプルを採集した。ウミニナとリュウキュウウミニナを形態から完全に分類することは難しいため、種特異的プライマーを設計し、PCR法による遺伝子増幅の可否をもって種判別を行った。種子島ではウミニナ類そのものが分布していない海岸も多く、種子島と奄美群島の間に横たわるトカラ列島には河川が少なく干潟が見られないため、ウミニナの分布域は九州南部と奄美大島の一部の海岸に大きく分断されていた。発表では、奄美大島を中心に両種の海岸毎の分布を詳細に報告し、個体群間のネットワークを考察する。


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