| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-075

放棄水田から再生する水湿植物

*北川久美子(信州大院・工),島野光司(信州大・理)

身近にみられた水湿植物は、水田の放棄や農薬の使用、土地改変によって、減少してきた。しかし、放棄水田の地下には、水湿植物の埋土種子が存在しているため、これにより水湿植物を再生できる可能性がある。今回は、首都圏に位置する狭山丘陵において、水湿植物の再生の可能性を探るため、復田の種組成と地下にある埋土種子集団の種組成を把握することを目的とする。東京と埼玉の都県境に位置する狭山丘陵の放棄水田ならびに復田で調査を行った。調査を行ったのは、「早稲田」、「西久保」、「八幡」、「菩提樹」、そして「北野の谷戸」の計5地区である。「北野の谷戸」は、2009年1月下旬に実験的に復田した地域である。その他の地区は、放棄水田と過去10年以内に復田した水田がある。これら全ての地区で復田した水田を「復田区」、放棄されたままの水田を「放棄区」とした。いずれの調査地でも除草剤を使用しておらす、稲作の有無は問わない。各地点で植生調査と採取した土壌から発芽実生法によって埋土種子調査を行った。水位は0cmである。植生調査の結果、「放棄区」ではヨシ・ガマ・オギなどといったヨシクラス(低層湿原)の種がみられた。「復田区」ではミゾソバ・ケキツネノボタン・イボクサなどのタウコギクラス(流水辺1年生草本植物群落)の種がみられた。「復田区」から環境省レッドデータブックや埼玉県レッドデータブックに記載されているオオアブノメ、イチョウウキゴケ、ウキゴケ、アブノメ、シソクサなどの水湿植物がみられた。これらの中でもオオアブノメ、イチョウウキゴケ、ウキゴケは埋土種子調査でも出現したことから、埋土種子から発芽して再生した可能性が考えられる。

放棄水田は絶滅危惧種を含む水湿植物の埋土種子を含んでおり、こうした種のシードバンクになっていることが考えられる。


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