| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-094

火入れ草原における刈取り管理が草原植生および草原性植物の開花に及ぼす影響

太田陽子(NPO法人 緑と水の連絡会議)

山口県秋吉台地域に広がる半自然草原は,毎年早春の山焼きにより維持されている.一部の地域では少数の農家が採草を継続している.しかし,山焼きで燃え残った場所を中心に植生が遷移し,また逆に,毎年採草が行われる場所では植生が変化し,種多様性の低下が懸念される場所もある.そこで,火入れに加えて刈取りを行った場合の草原植生への影響を検討するため,2007年に試験地を設置し,農家の採草時期に合わせて刈取り試験を開始した.試験地は,平均植生高が高い(80cm)・中程度(60cm)・低い(40cm)の3サイトを設置し,それぞれ6月刈区,11月刈区,刈なし区の3つに分割した.各区の面積は140m2で統一した.調査は4〜12月に行い,主要な種の開花茎数を毎月1回記録した.また,各区に2m×2mの方形区を5個ずつ設け,毎月の平均植生高と被度を計測し,刈取り処理前の6月と10月に植生調査を行った.

試験開始から3年目の2009年,地上部現存量は6月刈区では刈なし区の半分程度,11月刈区では8割程度になっていた.あわせて,いずれの6月刈区でもトダシバやヒカゲスゲ,ススキなどの被度が高くなっていた.出現種数は,すべてのサイトで刈取り処理区の方が多くなった.総開花茎数は,試験開始から一貫して6月刈区が最も多く,特にアキノキリンソウやニオイタチツボスミレ,ヤマジノギク,オトコエシ,ヤマハッカ,センブリ,ヒメハギは年々開花茎数が増加した.逆にツクシハギやマルバハギは減少した.キキョウやサイヨウシャジン,ミシマサイコなどはサイトごと及び年ごとに開花状況が異なっていたが,植生高が低いサイトよりは中程度以上のサイト,6月刈区よりは11月刈区で開花茎数が多くなる傾向があった.このように,火入れ草原での刈取り管理はネザサ主体の植生を短期間で変化させること,また,草原性植物の種によっては開花が促進されることがわかった.


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