| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-108

放棄後10年以内のアカマツ林型採草地における草原性植物の再生可能性

*小柳知代(東大院農),楠本良延(農環研),北川淑子(東大院農),大久保悟(東大院農),山本勝利(農環研),武内和彦(東大院農)

農村の主要な構成要素であった半自然草地は、都市化と管理放棄という二極分化が進行し、全国的に急速に減少した。管理放棄により樹林化した立地において、多様な草原性植物が生育する半自然草地を再生するためには、保全の対象となる種の個体群回復における制限要因を明らかにする必要がある。そこで本研究では、草原性植物の個体群回復可能性とその際の供給源を検証するため、埋土種子発芽試験および刈取再生実験を行った。まず、種ごとの埋土種子特性を明らかにするため、多様な草原性植物が生育する半自然草地において土壌を層別に採取し発芽試験を行った。その結果、地上部に生育する草原性植物の半数が埋土種子から出現せず、土壌中の埋土種子密度が極めて低いことが明らかになった。その一方で、草原性植物の中にも長期的なシードバンクを形成する可能性が高い種(アキノキリンソウ、タカトウダイ等)が存在することが明らかになった。次に、草原性植物の実際の個体群回復可能性とその際の供給源の違いを検証するため、放棄年数10年以内のアカマツ林型採草地において刈取実験を行った。その結果、刈取再開一年後に地上植生は大きく変化し、林縁で3種、林内で11種の草原性植物が新たに出現した。これらの種の供給源としては、長期的なシードバンクからの回復(ミツバツチグリ等)、林縁部に存在した個体からの種子供給(ヒヨドリバナ、ノハラアザミ等)、地下部に存在した株からの回復(シラヤマギク)という3通りが考えられた。本研究より、草原性植物の中には、埋土種子密度と種子分散能力がともに低く、地上植生や地下部における生存個体の有無が個体群回復において極めて重要な意味をもつ種が存在することが明らかになった。


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