| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-126

都留市鹿留川におけるカワラナデシコの個体群構造と繁殖特性

*近藤美幸,居積真由美,山口紗絵子,坂田有紀子(都留文科大学初等教育学科)

カワラナデシコDianthus superbus var. longicalycinusは、低地や山地の日当たりの良い草地、河原などに生育する雌性両全性異株の多年性草本である。本種は近年、群落の遷移、河川の改修や草地の改変などによる生育環境の悪化などにより、急激に数を減らしている。都留市でも同様の傾向がみられ、現在のところ鹿留川などの自生地にわずかに確認されているにすぎない。本種の生態に関する研究は少なく、特に野外における個体群動態について明らかにしたものはない。そこで本研究では、鹿留川の個体群が健全に維持されているのか、もし個体群の維持が難しい状況にあるのならば、その原因はどこにあるのかを明らかにし、今後の保全・再生手法を提示するために2009年から調査をおこなっている。今回の発表では本種の生活史・個体群構造・繁殖に関する特性について報告する。

調査地は山梨県都留市を流れる鹿留川中流域の河川敷に設置した。調査地内に2m×2mのコドラートを44ヵ所設置し、コドラート内の全個体をナンバリングした。また、ランダムに選択した15ヵ所のコドラート内の個体の個体サイズ、成長量、光環境、開花状況、雌性花と両性花の割合、結実率、種子生産量、死亡率を測定した。その結果、本種の成長や生存において光は重要な因子であるが、その影響の大きさは成長段階や季節によって異なる可能性が考えられた。死亡率は春から夏にかけての実生が定着するまでの期間に高い傾向がみられた。開花時期と種子生産量の関係をみると、8月上旬の開花のピーク期はその前後に比べてさっ果あたりの種子生産量が少ない傾向がみられた。これらの結果をあわせて、鹿留川における本種の個体群構造と繁殖特性について報告する。


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