| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-138

絶滅危惧種コアジサシの効率的な保全への提案:白い地面による誘引の効果

*佐々木太毅(明大・農・応用植物生態),清水真理子(東邦大・理・生物),北村亘(東大・農・生物多様性),増田直也(NPO法人リトルターン・プロジェクト),瀧本岳(東邦大・理・生物),倉本宣(明大・農・応用植物生態)

コアジサシSterna albifronsは日本に夏鳥として飛来し、砂浜や中州、造成地の裸地などに繁殖集団をつくり営巣する。絶滅危惧種に指定され、個体数減少の一因に営巣地の減少が挙げられている。コアジサシの営巣地の保全活動は積極的に行われているが、営巣地の予測は難しく、十分な成果は挙がっていない。適切な営巣地を効率よく保全するためには、営巣地選択の条件を詳細に調査する必要がある。過去の営巣の事例から、コアジサシは白い地面を好んで営巣することが示唆されている。そこで、本研究では野外実験を行い、白色の地面がコアジサシの集団営巣地内の巣場所選択条件となっているか検証した。また、関東地方のコアジサシの営巣地を調査し、白色の地面が集団営巣地の選択条件ともなっているか検証した。

野外実験は東京都下水道局森ヶ崎水再生センター施設屋上の人工営巣地にて行った。粒径3cm程の黒色の砕石を撒いた営巣地の一部に実験区を設置した。実験区には白い貝殻を撒いて地面を白色にした貝殻区と、何も撒かず砕石により黒色の地面の対照区を用意し、それらを3区画ずつ交互に設置した。調査は週3回行い、巣場所、巣数、孵化雛数などを記録した。また、集団営巣地の選択条件に関してはコアジサシの営巣地を写真撮影し、地面の色と営巣数に相関があるか解析した。

野外実験の結果、貝殻区では営巣数と孵化数が多くなっており、白色の地面が巣場所選択条件となることがわかった。同様に集団営巣地の選択条件となるかは現在解析中であり、発表時にはこれらの結果を総合し、今後の保全への提案をする予定である。


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