| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-185

モンゴルの植物生態系と遊牧パターンの相互作用ーモデルシミュレーションによる検討

*長谷川成明(地球研), 石井励一郎(JAMSTEC) ,山村則男(地球研)

モンゴルでは、定住せずに家畜とともに移動しながら広範囲の植生を利用する牧畜形態、すなわち遊牧が盛んに行われている。家畜の摂食によって植物群落は地上部バイオマスの減少や種構成の変化などの影響を受ける。また逆に遊牧の移動パターンは植物バイオマス量や分布パターンによって影響を受けている。このため、モンゴルでは人間活動と植物生態系の間に相互作用が働いており、人間活動の変化がどのような変化をもたらすのか予測することが困難である。

モンゴルでは2002年に土地法が改正、土地私有化法が制定され、居住地と農耕地について制限つきの私有化が認められた。このことは将来的に遊牧民の定住化を促進すると予測されている。遊牧から定住による牧畜へと人間活動が変化することで、モンゴルの植物生態系はどのような影響を受けるだろうか。本研究ではに、植生モデルと遊牧民の植生利用モデルを構築し、遊牧範囲の縮小が植生と遊牧民の獲得利益の双方に与える影響を予測した。

モンゴル国トゥブ県バヤンウンジュールソムにおいて調査区を設定した。2009年夏季の植物生態系の変化と遊牧行動についてモデルシミュレーションを行った。植生モデルは地球観測衛星TerraのMODISセンサから得た調査区のバイオマスデータをもとに変化式を得た。遊牧民の植生利用モデルは遊牧民の聞き取りによる移動の意思決定と所有家畜数をもとにモデル化した。その結果、遊牧は植物生態系の時空間的な異質性を効率良く利用しており、定住化は植物生態系に大きな影響を与える可能性のあることが示唆された。


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