| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-208

人工林における風倒木伐採施業の有無が哺乳類の生息地利用に与える影響

*難波海南子(北大・苫小牧研究林),揚妻直樹(北大・和歌山研究林)

森林では台風が発生すると多くの樹木がなぎ倒され、森林構造を大きく変える。台風によって大規模な風倒被害が発生すると人工林では林業施業上、様々な問題が発生する。例えば、木が風倒することで木材としての質は急速に低下する。また倒木が病害虫の発生源になることもあり、害虫の発生した木も材として市場に出すことはできない。それだけでなく風倒していない木への害虫被害も懸念されるため、風倒木は早期に倒木除去(皆伐および搬出)して再植林のために整地を行うことになっている。このような林業的側面がある一方で、風倒地は様々な生物にとって新たな生息環境となる可能性がある。

そこで本研究では人工林風倒地および倒木除去地における哺乳類6種(シカ、タヌキ、アライグマ、テン、エゾリス、コウモリ目)の利用を把握するため、1)風倒地、2)倒木除去地、3)無害人工林、4)無害天然林、という4つの施業区で赤外線センサーカメラを用いて利用頻度を比較した。また哺乳類の環境利用に関わる要因について、森林構造を調べることにより検討した。その結果、哺乳類の利用頻度はタヌキとテンが倒木除去地を忌避するタイプ、エゾリスとコウモリ目が風倒地・倒木除去地ともに忌避するタイプ、シカとアライグマが全ての施業区に影響されないタイプ、に分けることができた。さらに各施業区の特徴的な森林構造が明らかになったことで、哺乳類の異なる生息地利用の要因の一つとして森林の空間構造が効いていると考えられた。今回の調査結果より、風倒地および倒木除去地はいくつかの哺乳類の生息にとって重要な影響があると示唆された。


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