| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-215

日本産ミミズ類における体内銅濃度の比較

*野崎真奈, 藤井芳一, 岡田浩明(農環研)

陸上生態系の基盤となる土壌圏には多種多様な土壌動物が生息している。これら土壌動物は土壌汚染の影響を強く受ける。土壌動物のなかでもミミズ類は、土壌圏の物質循環や土壌改変などに強く関与し重要な役割を担うことから、土壌汚染影響評価の対象生物として古くから使用されている。ミミズ類における汚染物質の暴露経路としては、有機物と土壌の混合摂食のほか、昆虫類のような硬いキチン・クチクラ層を体表に持たないことによる体表から体内への取り込みが知られている。汚染物質によってはミミズ類の体内に蓄積され、食物連鎖を通じた高次捕食者への生物濃縮が懸念される。これまで、重金属のミミズ類に対する影響評価には、OECDやISOが提案する標準毒性試験の対象種であるシマミミズ(Eisenia fetida)をはじめ、主にツリミミズ科が用いられている。しかしながら、日本を含むアジアではフトミミズ科が優占しており、さらにはそのフトミミズ類への影響評価は進んでいないのが現状である。土壌生態系における汚染物質のリスク評価を行う際は、現場に生息するミミズ類を用いた評価を行うことが必要である。そこで本研究ではミミズの体内における銅濃度の分布から生態影響を評価するために、日本に優占するフトミミズ科のヒトツモンミミズ(Pheretima hilgendorfi)、ツリミミズ科のサクラミミズ(E. japonica)およびシマミミズを用い、各種ミミズ体内における銅濃度を比較、検討した。銅汚染土壌に暴露後、体表および各消化管部位の銅濃度を測定した。その結果、銅濃度はいずれのミミズも体表に比べ消化管で高い傾向が得られた。また、フトミミズ類とツリミミズ類では、銅濃度が高い消化管部位が異なることから、銅汚染による影響が異なることが示唆された。


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