| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-219

水棲カメ類は侵入種アメリカザリガニの管理に有効か?

*千谷久子(東大院・新領域),西川潮(新潟大・超域),高村典子(国環研・リスク),山室真澄(東大院・新領域)

侵入種アメリカザリガニ(Procambarus clarkii)は、沈水植物を摂食・破壊することにより水系生態系全体を変化させる、外来キーストーン種である。しかし、これらの効果的な管理法は未だ確立されていない。本研究は水棲カメ類を用いたアメリカザリガニの管理法の検討結果を報告する。

最初に、屋外に設置されたタンク(1m)を用いて、在来種ニホンイシガメ(Mauremys japonica)、東アジア原産クサガメ(Chinemys reevesii)、北米原産ミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta)がアメリカザリガニに及ぼす捕食効果と行動抑制の効果を調べた。Parkerら(2005)のメタ解析の結果から外来植物は、共進化の歴史を持たない在来草食動物によって、絶対量が抑えられることが示されている。本研究では、アメリカザリガニと原産地の異なる捕食者(在来カメ類)はザリガニに対する捕食効果が高く、逆に原産地が同じ捕食者(外来カメ類)は、ザリガニに対する行動抑制の効果が高いという仮説を立てた。結果、仮説は一部支持され、イシガメとアカミミガメの存在下でザリガニの個体数が大きく減少し、イシガメとクサガメの存在下でザリガニの行動が著しく抑制された。ザリガニに対する捕食効果と行動抑制の効果は在来種イシガメで最も大きいことが明らかになった。次に,大型の隔離水界(9m)を用いて、イシガメの存在の有無によりザリガニが沈水植物に及ぼす影響が変化するかどうかを調べた。結果、ザリガニが水草の摂食・破壊にもたらす影響は、イシガメの存在下で大きく軽減された。在来カメの保護は、アメリカザリガニの個体数や行動の抑制を通じて、ザリガニによる生態系被害を軽減することにつながるものと考えられる。


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