| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-252

外来生物マングースは希少鳥類の分布に影響を与えているか?

*南木大祐,久保田康裕

外来生物は導入された地域から分布域を拡大する。在来種に対する外来生物の捕食圧がある場合、外来種と在来種それぞれの空間分布動態を分析し、両者のハビタットの重複度を定量することが重要となる。沖縄島北部地域では、2000年から捕獲罠によるマングース駆除事業が行われており、約16500地点の罠毎に捕獲頭数と罠稼動日数が記録されている。希少鳥類(ヤンバルクイナ・ノグチゲラ・アカヒゲ)の分布は、約200地点のコールバック調査で在・不在が記録されている。本研究では、これらの観測データを用いて、マングースと希少鳥類の空間動態を予測する統計モデルを開発し、マングースと希少鳥類のハビタットの現状を定量した。マングースの分布動態モデルは、プロセスモデルと観測モデルからなる。プロセスモデルは、マングースの2000年初期分布を緯度傾度で与えた後、翌年の各地点のマングースの分布確率を、林道密度・標高・緯度の環境変数による自己ロジスチック回帰で定式化した。さらに、誤差項に条件付自己回帰で空間構造を導入し、分布確率が滑らかに推定されるようにした。自己ロジスチック回帰の切片と回帰係数から、マングース分布地点の生存率と拡大率やそれらに対する環境変数の影響を求めることができる。なお、1から生存率を引いた値が、駆除による分布地点の縮小率と捉えられる。観測モデルは、マングースの在・不在の検出率と分布確率から構成される。検出率も緯度・道路密度・標高などの環境特性の変数で定式化した。検出率は、罠稼動日数を試行回数とし、観測された捕獲頭数が得られる確率として導出されるので、罠の日当たりの捕獲確率と定義できる。以上の観測誤差を考慮した分布動態モデルのパラメータをMCMC法によって推定した。希少鳥類の観測データも同様の手法でモデリングし、パラメータの推定を行った。以上の結果から、マングースが希少鳥類に及ぼす生態リスクを議論する。


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