| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-276

野外加温操作実験による農耕地土壌の有機物分解に及ぼす温暖化影響の解明

*岸本(莫)文紅(農環研),米村正一郎(農環研),和穎朗太(農環研),近藤美由紀(国環研),上村真由子(日大・生物),白戸康人(農環研)

土壌有機物分解の温暖化に対するフィードバックとその制御メカニズムの解明は、農耕地土壌の炭素隔離の気候変動に対する将来予測を行う上で緊急な課題である。本研究は日本の代表的農耕地土壌(黒ボク土)を対象に、圃場スケールで土壌を温める野外操作実験による土壌有機物の分解に及ぼす温度上昇の効果を定量的に評価し、その制御メカニズムの解明を目的として行った。

黒ボク土畑圃場(小麦と大豆の輪作)において加温区および対照区それぞれ3つ(各区2m×2m)を設置し、赤外線ランプによる土壌加温実験システムを構築した。加温区の土壌深2 cmにおける温度を対照区のよりプラス2±0.2℃で電源をオン、オフすることにより高精度に加温制御ができた。土壌有機物分解量を示すCO2放出フラックス(根の呼吸が含まれないよう枠を設置、各区それぞれ2箇所)が通気法を用いた自動開閉チャンバーシステムによる連続測定を行った。また、層別CO2生成量の季節変化に及ぼす加温効果を明らかにするため、加温区および対照区にそれぞれ2箇所において土壌中CO2濃度プロファイル(0, 5, 10, 20 cm)の連続測定も行った。2008年7月末より加温を開始し、2℃の実験的昇温が夏作(ダイズ)および冬作(小麦)において有意なフラックスの促進が認められなかった。逆に、極端な高温と乾燥があった2008年夏作では、加温期間の積算フラックスで対照区が231±32 g C m-2であるに対し加温区は156±32 g C m-2で有意に低かった(**p<0.01)。土壌有機物の分解速度および土壌層別CO2生成量に及ぼす土壌温度と水分の複合影響を解析し、圃場スケールでの加温への黒ボク土の有機物分解の応答特性を明らかにする。


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