| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-302

火入れ地における炭素の蓄積過程と分布様式

*米川修平(鳥取大・農), 佐野淳之(鳥取大・農・FSC)

岡山県真庭市の蒜山地域では土壌中から1000年以上前の植物炭化物片が発見されているため、1000年以上前から火入れが行われていた可能性がある。そのため、草原での火入れの際に燃焼するバイオマスは、炭となって土壌中に長期間蓄積されていると考えられる。したがって、火入れによる炭素収支は放出よりも蓄積の方が多い可能性があるが、炭素の土壌中への蓄積過程と分布様式は未解明である。本研究では火入れ地における土壌中への炭素蓄積量を定量化し、火入れによる土壌中への炭素の蓄積過程と分布様式を明らかにすることを目的とする。

毎年春に火入れが行われている蒜山地域の北向き、南向き各斜面において斜度を測定し、火入れ時にバイオマスの燃焼温度と燃焼量を測定し、黒色土層の厚さと土壌中の炭素量を測定した。その結果、2008年と2009年のバイオマスの燃焼量に違いがみられた。すなわち、2008年は火入れ前に降雨が続いたため燃焼温度が低くなり、燃焼量が少なくなった。一方、2009年は晴天が続いたため燃焼温度が高くなり、燃焼量が多くなった。またバイオマスは尾根より谷で多い傾向がみられ、全炭素量は尾根より谷で有意に多かった。さらに木本バイオマスと無機態炭素密度の関係に正の相関がみられた。また斜度と黒色土層の厚さの関係に負の相関がみられたことから、土壌の流出量は斜度が大きい所で多く、斜度が小さい所で少ないと考えられる。これらのことから、火入れによる炭素蓄積量は火入れ前の気象条件とバイオマスによって異なり、特に木本バイオマスの多い所で炭が多く蓄積されると考えられる。また、炭素は土壌とともに流出していくため、地形によってその分布が異なってくることが示唆された。


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