| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-306

冷温帯放牧草原における土壌呼吸に対するリター呼吸量の寄与率とその変動

*井上智晴(早稲田大・院・先進理工), 小泉博(早稲田大・教育)

陸域生態系は地球規模の炭素循環の中核を担っている。土壌からの土壌CO2フラックスは68〜77×1015gC yr-1 と推定されており、これは植物の推定NPP量(50〜60×1015gC yr-1)を上回る。したがって、土壌呼吸の量的評価及び発生機構の解明なしに地球規模の炭素循環系を理解することはできない。その中でも草原生態系は陸域生態系においてその面積と炭素貯蓄量の30-40%を占めている主要な生態系の一つでありながら、その土壌呼吸の量的評価についての研究は少なく、とりわけ地上部リター呼吸の土壌呼吸に対する寄与率についての報告は少ない。しかしながら、リターは分解が遅いため地上に多くが蓄積されており、また、地下部と異なって周囲の環境要因の変動を受けやすく、その動態を知ることは重要である。

本研究は岐阜県高山市のシバ型放牧草原にて行なった。2007年4月から2009年12月まで積雪期を除いた各月ごとに土壌呼吸を赤外線CO2センサーを用いた密閉法にて測定した。また、2009年には細根・地下茎と地上部リターの呼吸を通気法にて測定した。

その結果、土壌呼吸とリター呼吸は温度と強い相関を持ち(土壌呼吸:Q10=3.66 - 2.85、リター呼吸:Q10=1.92 - 2.21)、年間土壌炭素放出量は1209gCm-2と推定された。その内訳は、土壌微生物呼吸:45%、根呼吸:31%、リター呼吸:23%であった。また、リター呼吸のR0値(温度0℃のときの呼吸量)は含水比100%のときに最大値に達し、その前後では低下する傾向を示した。今後は降雨や朝霧による含水比の変化も含めた土壌CO2フラックスの動態の解明が求められる。


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