| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-327

スギ幼齢林と壮齢林における生態系純生産量および炭素分配様式の比較

八代裕一郎, 志津庸子, 曽出信宏, 大塚俊之 (岐阜大・流域圏), 小泉博(早稲田大・教育)

森林は遷移過程や林齢に伴って構造そのものが変化する。しかしながら、このような変化が炭素循環プロセスにどのように影響するかはよく分かっていない。森林を皆伐すると炭素の吸収源から放出源に転じるが、植生の発達とともに炭素吸収機能も回復する。スギ人工林は日本の森林面積の約20%を占めており、代表的な森林タイプである。歴史的に多くのスギ人工林は自然林を皆伐して植林・管理されてきた。この皆伐・植林後のどのタイミングで炭素吸収源に転じるかを明らかにすることは、日本における森林の炭素収支を把握する上で不可欠である。

本研究では落葉広葉樹林皆伐後に植林されたスギ幼齢林(伐採後7年目、林齢4年生、雑草木が繁茂)において生態系純生産量(NEP)とその炭素分配様式を明らかにした。加えてそれらを壮齢林(40年生)と比較した。

幼齢林の純一次生産量は4.99 Mg C ha-1 yr-1 であった。それをスギ、雑草木および細根と分けた場合、それぞれ0.28、3.45、1.27Mg C ha-1 yr-1 となり、雑草木による生産量が大きいことが分かる。土壌呼吸量6.53Mg C ha-1 yr-1 であり、その内訳は根呼吸量が2.65、従属栄養生物の呼吸量は3.88 Mg C ha-1 yr-1 と推定された。幼齢林のNEPは1.12Mg C ha-1 yr-1 となり、森林伐採後7年で炭素吸収源として機能していた。植物体に1.15Mg C ha-1 yr-1の炭素が蓄積される一方、土壌は平衡状態にあった。壮齢林のNEPは4.18Mg C ha-1 yr-1 であり、そのほとんどがスギの成長による炭素蓄積(3.95 Mg C ha-1 yr-1 )であった。今後幼齢林は林齢に伴いスギによる炭素蓄積速度が増加し、全体の炭素吸収速度も増加すると考えられる。


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