| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-334

大学と地域連携による里山の生態系保全に向けた環境教育の取り組み.

*赤石大輔(NPOおらっちゃ),中村浩二(金沢大・環日本海セ)

<背景> 金沢大学は,2006年に能登半島・里山里海自然学校(三井物産環境基金による)を設立した.自然学校は,荒廃した農地や里山林の再生と活用による地域活性化と生態系保全を目的とし,地域と連携した調査研究・保全活動・環境教育の3事業を実施している.本発表では大学と地域の連携による環境教育の取り組みを紹介し,中山間地での里山保全の課題について議論する.

<環境教育の狙い> 地域の子供たちは里山に触れることなく,親や祖父母からの知識の伝達も途絶えている.地域を担う30−40代は多忙だが子供への環境教育への要望は高い.奥能登では学校は地域住民の交流の場であり,合意形成においても重要な施設である.このような状況下で,里山を活用した環境教育を導入し,地域の里山リテラシー向上による里山の再生と活用に向けた合意形成と内発的な活動を推進する.

<実施内容> 環境教育実践のため,2007年から地域住民の協力のもと休耕田を活用したビオトープ(1ha)および荒廃したアカマツ林を活用した保全林(3ha)を創設した.地元の小・中学校における総合学習等を利用した講義・実習ではビオトープで水辺の生物多様性や農地の荒廃と希少生物との関係を,保全林では植物観察,木質バイオマスなど里山資源の活用,森林整備とキノコ相の変化などを紹介.

<効果・課題> 子供たちの里山への理解が深まっただけでなく,保護者の保全活動への参加が増加した.教員による勉強会も開催され授業で里山を活用する事例も増えた.地域で里山里海という言葉が頻繁に出るようになった.今後は農林業と生物多様性の関係について理解を深め,地域に環境保全型農業を定着させていく.そのためにも,活動の持続性,効果的な教育の実践に向けて,専門スタッフの養成と行政との連携が必須である.


日本生態学会