| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S06-2

モンテカルロシミュレーションを用いた農薬の生態リスク解析

永井孝志(農環研)

現状、農薬の生態リスクに関わる規制としては、農薬取締法に基づいて、魚類、ミジンコ、緑藻の3つの水生生物に対する毒性試験結果と河川水中濃度の予測値との比較によってリスク評価が行われ、リスクが懸念される場合には登録が保留される仕組みとなっている。しかしこの評価スキームにおいて、濃度予測のシナリオは一つに限定され地域差などの不確実性は考慮されていない。また毒性評価においては、魚類と甲殻類に限り種間の感受性差による不確実性係数が適用されるが、その明確な根拠は示されてはいない。従ってより高度に生態リスクを評価するためには、毒性や曝露などの不確実なパラメータを一つに決定せずに分布として表現し、確率論的な評価を行うのが望ましいと考えられる。

そこで我々の研究では、毒性については種の感受性分布の解析を行い、曝露については、濃度予測モデルのパラメータ(水田面積や河川流量、農薬の普及率など)の地域的なバラツキを考慮して、モンテカルロシミュレーションにより曝露濃度の確率分布を推定した。そして、毒性と曝露の分布の重なり具合から、生態リスクを「影響を受ける種の割合」として定量化した。さらに、様々な農薬のリスクを横並びで評価する場合、得られるデータの質・量が農薬によってバラバラであるので、そのようなデータが少ないことによる推定の不確実性についても定量化を行った。

生態リスクを確率として定量化することで、「農薬の使用量を減らす」「農薬の流出防止対策をとる」「より低毒性の農薬に切り替える」などのリスク低減対策をとった場合の効果を予測できるようになり、より効率的にリスクを減らす管理対策を選択することが可能となる。


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