| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S11-5

防除モデル事業にみるオオクチバス等外来魚の防除戦略

中井克樹(滋賀県琵琶湖博物館)

2005年6月に外来生物法が施行され、オオクチバス等が特定外来生物に指定された。それに合わせる形で定められた「オオクチバス等に係る防除の指針」に基づき、環境省は同年度から「オオクチバス等防除モデル事業」を全国6地域で開始した。実施地域は、指針において「防除の優先度の高い水域の考え方」に記された「生物多様性保全の視点から重要な地域」であることを根拠に選定され、日本最大の湖・琵琶湖(滋賀県)から灌漑用ため池までを含む陣容であった。防除モデル事業は2008年度に最初の期限を迎え、羽田沼(栃木県)と犬山市のため池群(愛知県)を除く4地域では、2009年度からも事業が継続されている。

モデル事業では、生息個体の捕獲と繁殖活動の抑止を主軸とした水域内でのオオクチバス等の生息抑制が主要課題として取り組まれている。各事業水域は環境条件も、オオクチバス等の生息状況も大きく異なることから、生息抑制のために採るべき方法も現場の状況に順応した形で検討されつつあるが、これまでの実施状況を概観するといくつか課題も見えてきている。

各地で実施されているモデル事業が、他の地域が倣うべき「モデル」としての評価を得る上で、現時点で決定的に不足しているのは、モデル事業間の情報交換等がほとんどなされていないことである。また、オオクチバス防除活動の先進地域である伊豆沼・内沼(宮城県)では、ブルーギルがほとんど生息していないが、残る5地域ではブルーギルが最優占であるため、この魚を対象とした生息抑制手法の開発も急務である。また、伊豆沼で開発されマニュアル化もされた「人工産卵床」が、他の3つの事業地域(片野鴨池(石川県)、琵琶湖、藺牟田池(鹿児島県))でも採用されたが、マニュアル通りでは期待した成果が得られにくい“制約”のあることが判明した。演者らは、この制約を打開し人工産卵床の適用範囲を拡げる手法の開発にも取り組んでいる。


日本生態学会