| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S14-4

有害化学物質汚染土壌における微生物集団のメタゲノム解析

津田雅孝(東北大・院生命科学)

自然環境での物質循環に対する微生物の役割は極めて大きく、また、これら微生物は多種多様な生物現象を示す。このような役割・現象に関わる微生物が多数分離され、当該微生物の実験室内での純粋培養系を用いた分子レベルでの機能解析は、数々の新規知見を提示してきた。その一方で、自然環境棲息微生物のうち実験室で培養が可能な微生物は1%未満であることから、自然環境で「どのような微生物がどのような生物機能を有し、どのようにその機能を発揮しているか」の本質は未知であり、また、自然環境要因変動に対して微生物が集団として適応・進化していく様式やその機構も不明である。我々は、環境要因変動の一例として難分解性芳香族化合物等の汚染物質に晒した土壌環境での微生物-環境相互関係や微生物間相互作用の包括的解明をめざした研究を、メタゲノム解析も含めて実施している。閉鎖系土壌に4種汚染物質を同時添加し、経時的に、汚染物質残存量や培養可能菌数の測定、汚染物質分解細菌株の分離を実施した。また、汚染および非汚染の土壌由来のメタゲノムを用い、16S rRNA遺伝子ライブラリー解析や各種汚染物質分解遺伝子の定量PCR解析、第2世代シーケンサーSOLEXAによる大規模シークエンス解析、を実施した。汚染物質添加直前土壌や添加後ならびに非添加後の異なる時期の土壌に由来するメタゲノム計11試料の解析で、各試料に関して平均長75塩基のリードが約1,000万本ずつ、計11,000万本程の高精度なリードを得た。これらリードに関して、KEGGをはじめとする各種データベースに対してBLASTXで配列相同性検索を行った。その結果、汚染土壌においては、時間経過に伴い、菌叢が著しく変動するとともに、汚染物質分解酵素遺伝子を含む多種多様の遺伝子の顕著な質的並びに量的変動が認められた。なお、メタゲノム解析は国立遺伝研と東工大のグループと共同で実施している。


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