| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T09-1

生態学をテーマとした新しい展示室 ―遊べばわかる個体群から競争、進化、群集、保全まで

*石田惣,佐久間大輔,和田岳(大阪市立自然史博)

近年、生態学は社会的にもその重要性が増し、社会教育のテーマとしても広く扱われるべきものとなった。これは自然史博物館でも例外ではない。伝統的に博物館は分類学に依拠して自然を理解しようとしてきたが、近年はそれに加えて生態学も浸透してきた。今日の博物館は生態学的な有形・無形の情報を日々蓄積し、その成果を基にして生態学の社会教育活動を行っている。

博物館の社会教育は様々なインターフェイスを介して展開されるが、その一つは展示である。ところが、生態学を体系的に扱った展示を持つ博物館は実は少ない。もしそのような展示があれば、生態学の社会教育に新たな展開が生まれるはずだ。

大阪市立自然史博物館では2007〜08年にかけて、生態学の理論から自然の成り立ちを解説する常設展示を作った。この展示では、子どもから大人まで幅広い層の来館者が理論を学べるよう、各コーナーの中心にゲーム形式の展示物を設けた。この発表では、展示の制作過程、展示物の概要、来館者の反応などを紹介し、「遊べばわかる生態学」という目標が達成されているかどうかを評価してみたい。

【紹介予定の展示の一例】

「ドングリコロコロ 生き残りコースター」:コナラのドングリに見立てた球が転がるボールコースター。ゴールにたどり着けば発芽となるが、途中に捕食などのトラップがある。ドングリの生存率の低さと具体的な死亡要因を伝える。

「めざせ新天地!島の生物地理学シミュレータ」:球を生物、ポケットを島に見立てたスマートボール。ポケットの大きさ等によって球の入りやすさが異なる。島に生息する種数の理論を伝える。

「人のくらしで自然が変わる 里山シミュレータ」:ハンドルを回すとモニターの農夫が稲作や柴刈りなどの労働をする。回転速度に応じて労働頻度が変わり、植生も変わっていく。自然環境の成り立ちが人間の営みと深い関係にあることを伝える。


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