| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T10-6

ボルネオ熱帯林における土壌の栄養塩利用環境の違いと植物の適応

宮本和樹(森林総研四国)

ボルネオ島における熱帯ヒース林(ケランガス林ともいう)は、砂質で栄養塩類に乏しいとされる土壌(ポドゾル)の上に発達する脆弱な森林生態系として知られている。熱帯ヒース林の構成種はしばしば小さく厚い葉をもつが、このような形態的特徴は資源制限や被食防衛などと関連付けられて説明されている。北部ボルネオに位置する東マレーシア、サバ州には熱帯ヒース林と典型的な熱帯降雨林として知られる混交フタバガキ林とが同所的に分布しており、さらに熱帯ヒース林には森林構造や種組成の異なる2つの森林タイプ(Large crownとSmall crown)が見られる。Small crownではマキ科の裸子植物Dacrydium pectinatumが優占し、フタバガキ科樹種が優占するLarge crownよりも発達したポドゾルが見られるのが特徴である。混交フタバガキ林および熱帯ヒース林の2つの森林タイプ(Large crownとSmall crown)における土壌表層の硝酸態窒素濃度は混交フタバガキ林で有意に高かった。各森林タイプの優占樹種から林冠葉と落葉をサンプリングし、葉の窒素濃度や窒素利用効率を比較したところ、混交フタバガキ林、Large crown、Small crownの順に林冠葉および落葉の窒素濃度が低くなった。また、葉の厚さの指標であるSLAと窒素利用効率(ここでは落葉の窒素濃度の逆数で表す)との間に高い負の相関が得られた。本講演では主に窒素利用の観点から、土壌における栄養塩利用環境の違いと植物の適応について議論していきたい。


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