| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T12-5

カワウ食害対策と個体群維持:ハザードマップと個体群モデル

箱山 洋(中央水研)

近年、カワウの水産資源に対する食害が懸念されており、食害が大きければ、漁場保護・追い払い・繁殖抑制・駆除などによって捕食圧の低減や個体数管理を行う必要があるだろう。一方で、外来魚の食害と異なり、カワウを減らしすぎてはいけない。このため、食害の低減と個体数の持続性について十分に考慮したカワウ管理計画が求められている。個体群管理の観点では、広域(日本)を扱う必要があり、食害については地域に着目した漁場をそれぞれ扱う必要がある。ここでは、(1)全国の食害規模を把握し、(2)カワウの個体群の基礎モデルを構築することで、食害対策のカワウ個体群への影響についてのRule of Thumbを明らかにする。(1)第一に、アユを放流している漁業協同組合などからカワウの食害があるとの声があがっているが、実際の具体的被害やその範囲がどれほどか十分には把握できていない。そこで、アユ放流量の分布を全国規模で把握し、漁業者のカワウ食害に対する認識およびカワウねぐらの分布との関係を明らかにした。またカワウがアユ放流場所(漁協周辺)に飛来する数、すなわちハザードマップを推定した。ハザードマップによって定量的に地域での食害への危険性を把握し、対策への基礎としたい。(2)第二に、移動分散や生活史の特性を考慮したカワウの個体群モデルを構築し、シミュレーション等を行なう。広域に移動可能でいくつものコロニーがあるカワウ個体群は、メタ個体群を形成している。そこで地域個体群を単位とするメタ個体群モデルを構築した。各パッチ内には複数のコロニーがあり、繁殖率に密度効果があるとする。現在確認されているねぐら・コロニー数は全国で430である。個体はパッチ間を距離に応じて移動することができる。このモデルとそこから導かれる経験則の説明を行い、時間があれば管理方策の影響評価をシミュレーションした結果を紹介する。


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