| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T24-3

日本産鳥類のDNAバーコーディングによって示される近縁種間・亜種間の多様な遺伝

*西海 功,染谷さやか,岩見恭子(国立科学博物館)齋藤武馬,小林さやか,浅井芝樹(山階鳥研)

鳥類のDNAバーコーディングは2005年9月にABBI(All Birds Barcoding Initiative)が設立され、他の動物と同様COI領域の648bpをターゲットにすることや証拠標本を剥製で残すことなどが合意され、2010年までに世界の全鳥類約1万種をバーコード化することが目標となった。2009年末現在、約30%にあたる2934種が登録されており、旧北区地域においては1567種のうち915種(58%)が登録されている。日本では国立科学博物館と山階鳥類研究所が中心となって証拠標本の整備とDNA分析、登録をおこなっている。

鳥類では北米での研究が先行しており、種を分ける目安として2%が提案されている(Hebert et al. 2004)。しかし、日本とその周辺の鳥類では15種もの陸鳥類(リュウキュウコノハズク、ヒバリ、サンショウクイ、アカヒゲ、トラツグミ、キビタキ、メボソムシクイ、エゾムシクイ、イイジマムシクイ、ヤマガラ、ゴジュウカラ、メジロ、アオジ、カワラヒワ、カケス)で2%以上(2.1-7.7%)の亜種間の差異があり、逆にシロハラ上種やシマセンニュウ上種では別種とされている姉妹種間で2%以下(0.15-2.0%)の差異しかないことがわかってきている。

鳥類のバーコーディングの結果は鳥類の種分類の再検討を迫るものであるが、また実用上も様々な応用が期待されており、航空機への衝突事故調査、鳥類を宿主として蚊が媒介するウイルスの感染経路の研究、肉食性哺乳類・鳥類の食性の研究などについても紹介したい。


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