| 要旨トップ | ESJ57 企画集会 一覧 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T26 -- 3月18日17:30-19:30 F会場

保全生態学の成果を現場に活かす:保護管理ユニット設定の科学と法整備

企画者: 小泉逸郎(北大・創成), 今木洋大(NOAA)

近年、日本においても保全生態学の研究が飛躍的に増加してきた。しかし、研究成果が実際の保護管理に十分活かされているとは言いがたい。生物の保全を実現するためには、研究課題が実践的であるだけではなく、その成果が生かされる基盤が必要である。本集会では“本気の”保全生態学を目指すために、生態学者、法律学者、地元関係者を交えて研究成果を実際の保全に結びつける方法について考える。一例として絶滅危惧種保護に取り組むアメリカの経験を紹介し、日本において必要な保全の科学とそれを生かすための社会基盤について議論を深める。

本集会では、野外個体群における保護管理ユニット設定をテーマとして取りあげ、科学と法律の点から検証する。実際のプロジェクトにおける保護管理ユニットの設定を分析することにより、現在の研究と保全の実践の関係を概観する。保護管理ユニットの設定には、学術研究、法律、行政、地元経済などさまざまな要素が影響する。そのため、実効性のある単位設定には各分野の専門家の連携が不可欠となる。近年の保全遺伝学の成果により、ESU、DPS など、種レベル以下で保全単位を設定することが可能になってきた。しかし、日本では地域個体群単位で管理できる法律は非常に限られており、研究成果が一人歩きしているのが現状である。一方、アメリカの保全法には地域個体群の概念が盛り込まれており、サケ科魚類などで具体的な保全成果を挙げている。この背後では、地元NPOなどによる訴訟を通した保護活動が重要な役割を担っている。本集会では、保護管理ユニットを例にとり、日本において、科学、法律、保全の3者をどのように結びつけるか、今何ができて、今後何をしなければならないのかを整理する。

[T26-1] 絶滅危惧種法施行30年、アメリカはどのように科学を保全に取り込んできたのか 今木洋大(NOAA)

[T26-2] 保全遺伝学と保護管理ユニットの設定 小泉逸郎(北大・創成)

[T26-3] 保全生物学的研究成果と法律:法律はどこまで科学を必要と しているのか 畠山武道(上智大・地球環境)

[T26-4] 学術研究と保護管理の実際:絶滅危惧種イトウの保護管理単位に基づく保全を例に 江戸謙顕(文化庁・記念物課)


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