| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T30-2

微生物生態学における分子生物学的手法の有効性と限界

小島久弥(北海道大学低温科学研究所)

微生物とはそのサイズによって定義された生物群であり、系統的には極めて広範囲に及ぶ生物を含んでいる。機能的にも著しく多様であるこれらの生物に共通する特徴は、その定義である「小さい」ことのみと言えるが、この特性こそが研究を進める上での大きな妨げであり、微生物生態学の発展が手法の発達に大きく依存してきた根本的な原因である。微生物、特に形態による分類同定が実質的に不可能な原核生物の生態学研究において、生体分子の持つ情報を基に対象生物を検出・識別する手法は極めて重要な位置を占める。本講演では、分子生物学的手法と呼ばれるこうした手法が微生物生態学においてどのように利用されているのかについて概観する。分子生物学的手法の対象となり得る物質には様々なものが考えられるが、微生物生態学では核酸を対象とする場合が圧倒的に多いのが現状である。これには、相補的な塩基対を形成するという核酸の性質を利用した各種の手法の発達が大きく関わっている。多種多様な微生物を含む試料が研究の対象となる場合、試料から全DNAを抽出し、これを基に試料中の対象微生物を網羅的に検出するという解析が出発点となることが多い。群集構造解析と呼ばれるこうした解析は極めて一般的なものとなっており、また方法に制限される側面の強い微生物生態学においては、かなり大きなウェイトを占めている。このような解析手法についての有効性と限界について、培養や現場活性の測定といった手法との関連性と併せて議論する。


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