| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) B1-13

新潟県におけるイノシシの好適環境 -Maxentを利用した生息適地の抽出-

*望月翔太(新潟大・院・自然科学),山本麻希(長岡技科大・生物系),村上拓彦(新潟大・農)

野生動物管理を行う際、分布や環境利用を評価することが重要である。特にマクロスケールにおける情報は、野生動物管理に対する基礎情報であり、全国規模で整備することが必要である。本研究では、新潟県におけるイノシシ(Sus scrofa)に着目した。1970年代から2000年代にかけて、イノシシの分布は大きく変化した。かつて新潟県ではイノシシの生息は確認されていなかったが、現在、目撃情報は増加し、農作物被害も報告されている。分布拡大や農作物被害の増加が懸念されるが、イノシシに関する情報は整備されていない。本論では、新潟県全域を対象スケールとして、イノシシの潜在的な分布の予測を試みた。また、今後被害が増加すると考えられる地域の抽出を目的とした。

イノシシの好適環境予測にはMaxent (Maximum entropy)を使用した。使用データは2008年と2009年に取得された目撃情報と、2009年に取得された捕獲情報である。また、生息環境の評価には、2002年9月に撮影されたLANDSAT/ETM+画像から作成した土地被覆分類図を使用した。好適環境予測の変数は、林縁からの距離・水田からの距離・市街地からの距離・河川からの距離・標高・傾斜角・斜面方位・最大積雪深である。最終的に、目撃情報と捕獲情報それぞれの予測マップから、イノシシの好適環境を示す分布マップを構築した。

目撃情報を用いたモデルでは、最大積雪深・標高・林縁からの距離・市街地からの距離が重要な因子であった。捕獲情報を用いたモデルでは、標高・水田からの距離・市街地からの距離・河川からの距離が重要な因子であった。両者から潜在的な分布マップを構築した結果、今後被害が増加すると推察されるコアエリアが存在することが明らかとなった。


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