| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-11

都市の生物多様性は企業が守る!-企業保有地向け土地利用評価ツールの開発-(2)土地利用評価

*木村幹子(東北大学), 三輪隆(竹中工務店), 原口真(インターリスク総研),伊藤俊哉(住友林業緑化), 林豊(清水建設), 浦島裕子(三井住友海上), 竹内恵子(グリーン・ワイズ), 飯田慎一(パナソニック), 久保達哉(JSR), 永戸優子(凸版印刷), 高見謙(帝人), 西山由美(地球の芽), 足立直樹(レスポンスアビリティ), 河田雅圭, 中静透(東北大学)

都市域では、自然公園や社寺林などに貴重な自然が残されているが、それらは縮小化、分断化が進み、生物個体群を持続的に維持するのが難しくなっている。都市域に点在し、概して大きな敷地面積を持っている企業保有地は、これらの貴重な生息地間を有機的につなぎ、地域全体として生物多様性を保全していく上で、大きな役割を果たすと考えられる。生物多様性に配慮した土地利用は、劣化が進んでいる都市の生態系サービスの持続的な利用にもつながる。しかし、これまで企業保有地での緑地作りに関しては、法対策として緑地の「量」を確保する事だけが重要視されており、生物多様性の視点が盛り込まれているガイドラインは存在しなかった。その結果として、地域の景観にそぐわない一律的な樹林化や芝地化が促進され、外来園芸種や産地の異なる国産種苗の導入による遺伝的撹乱が生じているのが現状である。

そこで私たちは、企業保有地での土地利用に関するガイドラインを作成し、取り組みを可視化するための評価ツールを開発した。本ガイドラインで重要視した点は、地域生態系との調和を図り、生物の進化を妨げないこと、そして生態系サービスを持続的に利用することである。そのため、緑地の面積だけでなく、立体構造や周辺環境とのつながり、動物の生息環境や移動経路、導入する動植物の種類や産地、物質循環への配慮、化学物質管理などの項目も評価に盛り込んだ。本稿では、それぞれの評価項目の詳細を解説し、科学的妥当性と実用性について議論する。


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