| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-06

オオシロアリにおける兵隊特異的化学物質とその社会機能

*北條賢(流大・農),石川由希,三浦徹(北大・地環研)

シロアリのコロニーにはある仕事に特化した形態をもつ「カースト」が存在し,各カーストが様々な役割を分担することで組織的な社会を形成している。このような分業システムを維持するためには,社会を構成するカースト間での綿密なコミュニケーションが必要とされる。多くのカーストで視覚が発達していないシロアリでは,化学物質(フェロモン)を主体としたコミュニケーションを行っていると予想される。

オオシロアリHodotermopsis sjostedtiの兵隊は肥大化した大顎など物理的防衛に特化した形態をもつ。一方で,我々の先行研究より,大顎腺や唾液腺といった外分泌腺についても兵隊特異的な発達が見られることが示されている。また,いくつかの分泌腺からはリポカリンタンパク質であるSOL1が分泌され,他個体へと受け渡されている。リポカリンは疎水性低分子化合物をリガンドとするタンパク質であることが知られているため,オオシロアリ兵隊の外分泌腺に含まれる低分子化合物がカースト間のコミュニケーションに用いられている可能性が推測される。そこで,本研究ではまず,ワーカー・兵隊の各外分泌腺の抽出物をガスクロマトグラフィーに供し,兵隊特異的な成分の探索を行った。その結果,頭部および唾液腺から兵隊特異的な低分子化学物質が検出された。さらに,SOL1タンパク質との相互作用の解析や,兵隊特異的化学物質を用いたワーカーに対する生物検定の結果についても報告し,兵隊特異的な化学物質の機能を考察したい。


日本生態学会