| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-08

繁殖フェノロジーのマッチ・ミスマッチと栄養モジュールのダイナミクス ―気候変動下における群集構造の理解に向けて―

*仲澤剛史(京大・生態研センター), 土居秀幸(Univ. Oldenburg)

ここ数十年の気候変動によって、生物の季節的な振る舞い(繁殖や渡り、開花、開葉など)が大きく変容してきていることが報告されている(フェノロジーシフト)。重要なことに、その影響の程度や方向性は種ごとに違うため、気候変動は種間相互作用の同調性や個体群ダイナミクスの季節性を変え、さらには群集構造や生態系機能にも予期せぬ影響を引き起こすかもしれない。本研究では、まず始めに、フェノロジーシフトの観測データは、できれば個体数ではなく人口学的な形質パラメーターも含んでいることが望ましいと主張する。なぜならば、そうでなければ、気候変動に対する群集レベルの応答メカニズムを厳密に理解したり、プロセスベースの数理モデルを構築したり、群集内外への波及効果を予測することが困難になるからである。くわえて、種特異的なフェノロジーシフトの群集生態学的な影響を調べるための第一歩として、人口学的パラメーターの季節性を組み込んだ三種系の栄養モジュールモデルを提示し、フェノロジーの同調性と群集構造の関係について考える。その結果、フェノロジーの同調性は群集ダイナミクスの基本的な特性(トロフィックカスケードの強さや種間競争関係、共存可能性など)に大きく影響することが示された。形質のフェノロジーと種間相互作用のトポロジーに着目することで、生物多様性の気候変動科学において、生態学者はもっと活躍できると期待する。


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