| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I2-03

外来アリは甘露排出者によって増える!?

*田中宏卓, 辻和希(琉球大学・農)

[I2-03] 外来アリは甘露排出者によって増える!? *田中宏卓, 辻和希(琉球大学・農)

外来アリのいくつかの種はアブラムシ類やカイガラムシ類などの甘露排出昆虫と強い相利共生関係を結んでいることが知られている。

この外来アリと甘露排出者の共生において、外来アリが甘露排出者の天敵を排除することなどによってその現存量を増加させる効果を持つことは、これまでに世界各地で行われた研究によってよく記述されてきた。しかしながら甘露排出者の側が外来アリの現存量に与える効果についての研究はほとんどなく、その様相は未だ十分に解明されてはいない。

演者らは侵略的外来アリの1種であるアシナガキアリ Anoplolepis gracilipesの侵入が見られる沖縄島ヤンバル地域の芝生草地において、甘露排出者の現存量を操作する野外実験を2010年秋季に行い、甘露排出者がアシナガキアリの現存量を増大させる効果を持つかどうか、またその結果として在来アリ(クロヒメアリMonomorium chinense)の現存量はどう変化するかを調査した。

その結果、1)甘露排出者の現存量を増大させるとアシナガキアリの個体数(地表現存量)が統計的に有意に上昇すること、2)甘露排出者を増大させてもクロヒメアリの現存量は大きく変化しないこと-が明らかになった。

今回の実験でのアシナガキアリの局所的な現存量の増大には1)採餌個体の学習や、フェロモンを通じた餌場への同巣他個体の動員などによる行動的な反応、2)甘露供給によって巣内のワーカー生産数が増大するなどの生態的な反応-の二つの反応の結果を含んでいるものと考えられる。実際には実験期間が短いこともあり、今回の結果には行動的な反応の影響が大きいと考えられるが、今後は両者の効果の峻別する工夫が必要である。講演ではこの他にクロヒメアリが甘露排出者現存量に反応しなかった理由についても考察する。


日本生態学会