| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) J1-13

海産緑藻の配偶システムと有性生殖のコスト

*富樫辰也(千葉大・海)

卵配偶を行う他の多くの生物グループと違い、海産緑色藻類にはさまざまな配偶システムが見られる。特に特徴的なのは、両性で配偶子のサイズが異ならない同型配偶を行う種が見られることである。また、多くの理論研究で進化的に極めて不安定だとされているわずかな異型配偶を行う種も多く見られる。さらに、顕著な異型配偶を行う種もある。これらの多様な配偶システムは、配偶子が示す特異的な行動ならびに、生息場所の環境と密接な関係を持っている。同型配偶、わずかな異型配偶、顕著な異型配偶を行う種のうち雌の一部は、眼点と光受容器官から成る走光性器官を持っており、放出されると直ちに正の走光性を示して、海面直下の2次元平面に集合して効率的な接合を行う。これらの種はいずれも海面までの距離が近い潮間帯上部に生息する。雌性配偶子が走光性器官を有しているにも拘わらず雄性配偶子が小型で走光性器官を有していない種では、性フェロモンによる雄性配偶子の誘導システムが見られる。海面までの距離が遠い深い場所に生息する種では雌雄の配偶子にはともに走光性器官が見られない。これらのことから、放出された配偶子の接合効率は、海産緑藻の有性生殖機構の進化における重要な淘汰圧となっていると考えられる。

従来の研究に見られるように、生産される配偶子が少ない方の性(一般には雌)の配偶子は全て接合してしまうとすると、同型配偶には性があっても2倍のコストは掛ってこない。本研究では、これまでに得られた配偶子のサイズや遊泳速度の計測データに基づいて、遊泳する配偶子の衝突頻度から形成される接合子の数を計算によって求めた。その結果、同型配偶でも、性が存在する場合には、存在しない場合に比べて最大で2倍近いコストが発生し得ることがわかった。


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