| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-012

異なる地質を含んだランドスケープにおける樹木群集の機能的形質の変異

*岡田知也, 松下通也, 中川弥智子(名大院・生命農)

群集構成種の機能的形質は「環境によるフィルタリング」と「競争によるニッチ分化」といった2つのプロセスによって決定されると考えられる。環境によるフィルタリングは,群集構成種のとる機能的形質の範囲を限定し,競争によるニッチ分化は,群集構成種間の機能的形質の類似性を限定する。これら2つのプロセスが同時に作用することにより,資源の乏しい環境では機能的形質の変異は小さく,資源の十分な環境では機能的形質の変異は大きくなり,またこれらの環境を含むランドスケープ全体では機能的形質におけるβ多様性が高くなると予想される。そこで本研究では,異なる地質を含んだ里山ランドスケープにおいて,群集の種組成と機能的形質の組成の関係を明らかにするとともに,上記の仮説を検証した。

調査は,愛知県瀬戸市海上の森で行った。海上の森は花崗岩地域と砂礫層地域からなり,花崗岩地域では主にコナラ,ソヨゴ,リョウブ,砂礫層地域ではアカマツ,ソヨゴ,コナラが優占している。本研究では、2種類の異なる地質を含んだ10個( 花崗岩×6 ,砂礫層×4;30×30m2~50×50m2)の各調査区において,胸高直径 ≥ 5 cmの樹木を対象とし,各種3個体以上をランダムに選び,葉(10枚/個体)と枝(3シュート/個体)を採取し,葉面積,比葉面積(SLA),葉乾物含量(LDMC),および樹高の4つの機能的形質を調べた。

本発表では,調査区内における機能的形質の類似性およびばらつきを地質間で比較するとともに,調査区間の種組成の変化と機能的形質の変異の関係を明らかにすることを通して,群集構成種の機能的形質が決定されるメカニズムを考察する。


日本生態学会