| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-022

北茨城市小川試験地におけるササ類3種の20年間の動態

*新山馨(森総研東北),九島宏道(森総研木曽),齊藤智之(森総研),柴田銃江(森総研東北),堀良通(茨城大・理)

人為撹乱がなくなった古い二次林で、桿高や桿寿命の異なる3属3種のササ類(スズダケ、アズマザサ、ミヤコザサ)の20年間の動態を、大小2つの空間スケール、6ha(300m×200m)と24m×10mで調査した。6haの試験地内で、1990年に3種は全く別個に生育していた。3種共に20年間で分布範囲は拡大し、2010年には2種ないし3種の混合群落が部分的に出現するようになった。その中で3種の競合が生じた24m×10mの範囲で、全桿マーキングをして1989年から約20年間、新桿の出現を記録し3種の動態と競合結果を調べた。スズダケは20年間で24m×10mの範囲をすべて覆い尽くした。スズダケの水平方向の拡大速度は0.9-1.0 m/yearであった。結果としてミヤコザサは2004年以降、急激に桿数を減らし、2008年には、この範囲からほぼ駆逐された。一方アズマザサは桿数を減らしながらも同じような場所に桿を維持していた。スズダケは10年以上、アズマザサは4,5年、ミヤコザサは1,2年の桿寿命を持っている。スズダケは他の2種に比べ地下部の割合が少なく、刈り取りや撹乱に弱いことが知られている。山火事や放牧、落ち葉掻きなどの人為撹乱の無くなった森林の林床では、スズダケが桿高で勝るため、スズダケのクローナルな拡大を抑える草本植物は存在しない。当然、他の植物は排除され、林床の植物種の多様性も低下した。この20年間の林床植生の変化は、過去のオーバーユースによって生じたササ類の分布縮小や種類変化が、近年のアンダーユースによってスズダケ優占の原植生に戻る過程なのか、更に検討が必要である。


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