| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-058

マルハナバチの花選好性に及ぼす視角度と花間距離の影響:人工花を用いた閉鎖系実験

*増田光(富山大・理),道野峻介(富山大・理),石井博(富山大・理)

<背景>複数種のポリネーター(花粉媒介動物)において,同じ種類の花を選択的に訪れる行動(定花性や選好性)が報告されている.どのような時にこうした行動が顕著になるのかを知ることは,植物の繁殖を考える上で重要である.これまでに花の色や形態など,植物の形質がポリネーターの花選択に影響する要因として報告されてきた.一方,植物の生育密度が花選択に影響する可能性も指摘されている.例えばGegear & Thomson(2004)やIshii (2005)は人工花を用いた実験で,花間の距離が短いときに同色花への選好性が顕著になることを報告している.しかし彼らの実験では,花間距離が飛行距離と花の見つけやすさ(遠いと見つけにくい)のどちらを介して花選択に影響しているのかが区別できない.

<実験>花間の距離(5,10,15,20cm)と花の大きさ(直径2,4,6cm)を独立に変化させ,飛行距離と花の見つけやすさが,訪花昆虫の花選択にどう影響するか調査した.実験には青・黄2色の球体の人工花と,クロマルハナバチを用いた.

<結果>花が大きいときには,距離が短いときほど同色花への選好性が強かった.しかし花が小さいときには,距離が長いときほど選好性が強かった.花サイズや距離が異なっていても,隣の花の見かけの大きさが同じ状況では選好性の強さに差はなかった.

<考察>以下の仮説を立てた.1) 花を容易に見つけられる(花が大きく距離が短い)ときには好みを優先するため選好性が強い.2)やや花が見つけにくい(花が大きく距離が長い/花が小さく距離が短い)ときには,見つけた花から順に訪花するので選好性が弱い.3) 花が見つけにくい(花が小さく距離が長い)ときには,特定の花の探索イメージに依存して花を探すため選好性が強い.

<結論>生育密度は,飛行距離よりも見つけやすさを介して花選択に影響していることが示唆された.


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