| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-098

CO2噴出地に生育するオオバコにおける気孔の性質の進化

*上田実希(東北大・生命科学), 梶川尚(東北大・生物), 彦坂幸毅(東北大・生命科学)

大気中のCO2濃度が急激に上昇している。植物が高CO2濃度にどのように適応するかを知ることは、未来の生態系を予測する上で重要である。何世代にも渡って高CO2環境に晒された未来の植物の高CO2濃度への応答は現在のCO2環境の植物の応答と異なる可能性がある。未来の植物の応答を予測する上で、天然の高CO2噴出地に生息し、何世代にも渡って高CO2に晒されてきた植物の性質を調べることが有効である。通常、植物は高CO2条件で水の損失を小さくするために気孔コンダクタンスを小さくする傾向がある。このため、高CO2条件に長く晒されてきた個体群では気孔を少なくしたり小さくしたりする進化をしている可能性がある。本研究では、高CO2噴出地のオオバコを材料として、気孔の数とサイズを通常CO2域のオオバコと比較した。

国内の4か所のCO2噴出地周辺の高CO2域とそこから少し離れた通常CO2域に生育しているオオバコから回収した種子を発芽させ、2つの異なるCO2濃度に設定したオープントップチャンバー内で育成した。

本研究では気孔の性質を表す指標として、気孔密度(SD)=孔辺細胞数/葉面積、気孔指数(SI)=孔辺細胞数/(表皮細胞数+孔辺細胞数)、孔辺細胞の長さ(SL)を測定した。

その結果、SDとSIの増減には4か所の噴出地に共通する傾向は見られなかった。SLに関しては4か所すべての噴出地においてそれぞれの対照区のオオバコよりも値が小さい傾向があった。

高CO2環境に何世代も晒されたオオバコは、通常CO2条件のオオバコよりも気孔のサイズを小さくすることで気孔コンダクタンスを小さくする進化を遂げたことが示唆された。一方、気孔の密度に関しては4か所の噴出地に共通する傾向は見られなかったことからCO2濃度の影響は小さいことが示唆された。


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