| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-120

風洞実験によるオオオナモミの風耐性における力学的性質の解析

*長嶋寿江, 彦坂幸毅(東北大・院・生命科学)

植物は個体密度が高いと、隣接個体を感知し、茎を徒長させることがよく知られている。徒長することの利得は、隣個体よりも多くの光を得ることが可能となることである一方、徒長による損失は実はまだあまり詳しくはわかっていない。徒長の利得と損失を定量的に明らかにすることによって、徒長現象を進化・生態学的視点から説明することができると期待される。

本研究では、徒長の損失としてまず個体の風に対する強さに着目した。先行研究のオオオナモミを用いた実験と解析では、密集した個体は背が高い一方で茎が細く、座屈(自重による変形)が生じるぎりぎりながらも自重を支えて立っていた。しかし、その茎の太さでは風速10-20m s-1 にしか耐えられないと計算された。ただこの計算は、風による個体の変形を考慮していない。そこで今回は風洞実験を行い、ポット植えの孤立個体(4個体m-2)と徒長した群落個体(100個体m-2)について風に対する強さを調べ、また将来のモデル化に必要なパラメーター値を取得した。

孤立個体は風による茎の変形が少ないため、これまでの計算どおり、20m s-1で折れることはなかった。一方、群落個体は、茎根元の近傍の根が伸びるためか根元で大きく傾き、茎はほとんど曲がらず、風速20m s-1でも茎が破壊されることはなかった。

それぞれの個体についてCd(抗力係数)を測定した。Cdは形状による無次元量で、乱流の効果を現し、同じ風速・投影面積でも値が大きいほど構造に大きな力がかかる。植物のような複雑な構造では実測によってしか得ることができない。8, 9月は、群落個体では風で傾いて低くなるため、孤立個体とCdの違いが少なく、そのため風とともに受ける力が同じように増加することがわかった。10月では、風で変形しない果実があるため、孤立個体でCdが2倍にもなった。群落個体では茎が傾くため、果実があってもCdにあまり違いはなかった。


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